fake

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登場人物

合コンで女の子に声がカッコイイと言われて、カッコイイ声を出そうとしている。
彼女いない歴=年齢。彼女がほしくてたまらない。

三次元に興味のない生粋のオタク。とはいえ、見た目は普通。
エロゲーのために、生活費を犠牲にする。性格はいいほう。

AとBが参加していた合コンにいた女の子。
いたってふつうの子。

Cの女友達。見た目以上に年上に見えるクールビューティー。
外面だけ取り繕う人が大嫌い。

※『』内は基本いい声でお願いします。

配役表
A(男):
B(男):
C(女):
D(女):

fake

C「声、かっこいいですね」

 

A(タイトルコール):fake(フェイク)

 

(Aの部屋でゴロゴロしているAとB)

A「あーあー、ゴホン、『あーあー』」

B「なんだよ、急に」

A「いやぁ、ほら、ちょっと前に一緒に合コン行っただろ?
その時に知り合った女の子に『声、かっこいいですね』って言われちゃってさ。
ゴホン、『どうかな? こんな声なら、かっこいいかな?』」

B「あー……」

A「その大人になっても厨ニ病から抜けていない人を見るような目を止めろ」

B「違うな、大人になっても本音とお世辞の区別もつかない人を見るような目だ」

A「いいや、あれは本音だったね、間違いない」

B「どこからそんな自信が沸いてくるんだよ……」

A「俺を見る目が潤んでいたからな」

B「酒が入っていたからだろ」

A「頬がほんのりと赤くなっていたし」

B「それも酒のせいだ」

A「……」

B「……なんだよ」

A「かっこいいなんて今まで言われたことないんだよ。

夢くらい見てもいいだろ!? もしかしたら、本当かもしれないじゃないかよぉっ!!」

B「なんだ、夢ってわかってるんならいいや」

A「夢じゃないですし、現実ですし、かっこいいって言われましたし!」

B「声が、だろ? 声がカッコイイなんて、ほかに褒められそうなところがなかっただけじゃないか?」

A「そ、そんなことないね!!」

B「つうか、お前、合コンの時、女の子と全然喋れてなかっただろ。

ちらちら女の子見ながら、飲み食いして、時々どもりながら『そそそ、そうだよね』とか相槌打ってただけじゃないか。

しまいには酔いつぶれて、寝てたし。介抱したの俺だぞ」

A「そ、それは悪かったと思うけど、お前も俺とそんな変わらなかっただろっ!?」

B「そもそも俺は飯を食いに行ってたからな」

A「枯れてやがる」

B「三次元に興味がないだけだよ」

A「とにかく、あの子は俺に興味あるねっ! 間違いない」

B「現実を見ろよ、彼女いない歴=年齢の童貞くん。

声がかっこいいだけでモテるんなら、今までに彼女くらい作れたはずだろ。

そのままだと、魔法使いになっちまうぞぉ~?」

A「ならねえしっ!!」

B「そもそも、お前女の子と付き合って、どうしたいのよ」

A「そんなのイチャイチャしたいに決まってるだろ」

B「ふぅん、例えば?」

A「そ、そりゃお前、手をつないで『小さい手だね』『あなたの手が大きいだけだよ』とか、

腕を組んでやんわりと当たる胸の柔らかさにドギマキしたりな」

B「エロゲで十分だろ」

A「ほ、ほかにも、ちゅ、チュウとか、せ、セセセ……」

B「TENGAで十分だな」

A「俺は三次元の女の子とイチャイチャしたいんですーっ!!」

B「はぁ、つか、お前さっきから聞いてたら、イチャイチャするのが目的みたいだけど、

もしも、付き合い始めた相手が恥ずかしがり屋でイチャイチャするのを嫌がったらどうするんだよ」

A「そ、それは……が、我慢する」

B「へぇ、それじゃキスとかセックスも嫌がったら?」

A「な、あぐ……、相手が許してくれるまで我慢する……」

B「そのまま一年経ったりしたら?」

A「え、一年……? いや、さすがにそれはない……だろ」

B「例えばの話だ。にしてもさっきから聞いていれば、そんなもん恋人じゃなくてもいいじゃないか。

お前のいうソレは金を払えば、そこらの店で買えるもんだろ」

A「な、おま、馬鹿だろっ!? 彼女と『キャッキャウフフ』するから意味があるんだよ」

B「だから、相手が嫌がったらどうするんだよ。我慢するんだろ?

『キャッキャウフフ』したいから付き合うのに、我慢するってのは、なんかおかしくないか?」

A「うるっさいな、とにかく、俺は彼女がほしいのっ!!

お前が言うのは例えばの話だろっ!」

B「まぁ、確かにな。でも、三次元の女なんてめんどくさいだけだろ」

A「面倒な目に会いたいんだよ、畜生め」

B「……マゾか?」

A「なんでそうなるんだよっ! そんなことないっ……と強く否定もすることもできないがっ!!」

B「だって、自分の時間は減るわ、デート代とかプレゼント代とかで金は減るわ、

付き合って何か月記念日~とか忘れるとヒスるわ、いいことなんてないだろ」

A「そんなことないねっ!!」

B「ふぅん、まぁ、どうでもいいけど、お前、彼女って言葉に夢見すぎじゃないか?」

A「どういうことだよ」

B「なんかお前、女の子とイチャイチャするために彼女がほしいって言ってるじゃん。

そんなんじゃなくて、ちゃんとその『人』を好きになれって話だ。

それがあれば、イチャイチャしなくてもいいだろ、別に」

A「な、ぐ、お、俺はイチャイチャしたいんだーっ!!」

B「あぁ、はいはい、そうですか。女の子と付き合うことじゃなくて、女の子とイチャイチャするのが目的なのな」

A「なんで今日に限って絡んでくるんだよ!?」

B「そりゃお前は俺の大切な友達だからな。ちゃんと恋愛してほしいんだよ」

A「急に真面目になるな、気持ち悪い」

B「ひどい言われようだな。それじゃ、これを最後にしてやろう」

A「なんだよ」

B「別にお前の声、かっこよくもなんともないぞ。普通だろ」

A「そ、そんなことねえよっ! ゴホン『そんなことないに決まっているだろう?』」

B「あ、キモいだけだわ」

A「そこはお世辞でもかっこいいって言うところじゃねえの!?」

B「悪い、ほら、俺、正直だから。つか、なんでキャラまで変わってるんだよ」

A「そりゃこういう声はこういう喋り方のほうがかっこいいだろ」

B「……やめとけやめとけ。そんなんで好きになる女なんてどうせアホの子だ。

まぁ、そんなんで好かれようと思っているお前も、大概アホだけどな」

A「お前、俺のことを大切な友達だって言うんなら、少しは背中を押してくれてもいいんじゃないか?」

B「だったら、お前自身を好きになってもらえるようにしろよ。

まぁ、声もその一部かもしれんが、作った声はちょっと違うだろ」

A「ぐぬぬぬぬ……」

B「お前も付き合えそうな子を狙うんじゃなくて、ちゃんとその『人』を好きになった人と付き合えよ」

A「ぐああああああああ、うるせええええええっっ!!」

B「ちなみに、合コンの時見てたけど、その子、別にお前に興味なんてないと思うぞ?」

A「あぁもう、帰れ、お前、帰れっ!!」

B「はいはい、帰りますよー。新作エロゲが俺を待ってるからな。じゃな」

(B、Aの部屋からさる)

A「……あの子は俺に興味あるはず……。だって、カッコイイって言ってたし。

うし、気にしててもしゃあない。『俺のこの声で、あの子を落としてやるぜ……』」

B「はぁ、そのままの自分を好きになってもらわないと、意味ないと俺は思うんだけどねぇ……」

~翌日~

C「昨日見た映画、面白かったね~」

D「えぇ、話自体は面白かったわね。ただ、あの主演の女優は好きになれないわ」

C「そう? カッコよかったと思うけど」

D「作り物って感じがどうしてもするのよ」

C「あぁ、それはわかるかも……」

A「いた、あの子だ……。よし、行くぞ……」

C「それで、今度は何見に行く?」

A「『おはよう、いい天気だね』」

C「え、あ、お、おはようござい、ます……?」

A「『お邪魔、だったかな?』」

C「あ、いえ、大丈夫、ですけど……」

D「……誰ですか?」

A「『僕は○○といいます。先日、△△さんと知り合ってね、見かけたから声をかけようと思ったんだ』」

D「……本当?」(小声)

C「……多分?」(小声)

A「『ちょうどまた話したいなって思っていたんだ。よかったら、一緒に行ってもいいかな?』」

C「わ、私は構いませんけど、あの、この子が人見知りなんで……」

D「……」

A「『そうか、それは残念だな。それじゃまた今度にするよ』」

C「は、はい……」

A「『それじゃ、またね』」

C「……」

D「……」

A「ふしゅーふしゅー、はぁはぁ……。よ、よーし、うまくいっただろ。
昨日、散々シミュレートしたからな。この調子で少しずつ距離を詰めて……、むふ、むふふ……。

はっ、『おっと、いかんいかん。常日頃から気をつけねばな、ふふ、ははははは』」

C「……キモ」(超絶冷たい声)

D「本当に。何なの、あの人。
朝から気持ち悪い声を聞かされて、最悪な気分なのだけれど」

C「あはは、ごめんね」

D「あなたが悪いわけじゃないでしょう?
いったい、どこから声を出しているのかしら、気持ち悪い」

C「確かにあれはないよねぇ。すごーく作り物っぽかった」

D「ぽかった、じゃなくて、どう考えても作り物よ。
もしかして、あれが受けるとでも思ったのかしら?
もしも、そうだとしたら馬鹿としか言えないわね」

C「あー……、あの人、たぶん、先輩と出会った合コンにいた人だと思うんだけど……。
その時、『声、カッコイイですね』とか言ったような気がする」

D「それでわざわざ声を作って話しかけたとするなら、救いようのない馬鹿ね。
それ以外にすることがもっとあるでしょうに」

C「結構、厳しいこと言うねぇ」

D「表面ばかり取り繕って媚びへつらう奴が大嫌いなのよ。虫唾が走るわ」

C「なんか、『こんな声好きだろ? どう?』って感じだったよね」

D「ほんと呆れるわ。あなたの言葉を鵜呑みにして、そう演じようとするだなんて」

C「あははー……」(乾いた笑い)

D「あんな奴、どうせ体目的の馬鹿でしょ」

C「それに比べて、先輩はまったく体に興味ないんだよねぇ……」

D「あぁ、そう言っていたわね。もしかして、ゲイなんじゃない?」

C「そんなことないよー。な、なんか、エロゲー? とか大好きみたいだし」

D「……なんでそんな人を好きになったのよ」

C「うーん、すごい自分に正直なところ、かな。
いいことはいい、悪いことは悪いってちゃんと言ってくれるんだよ。
それも相手を傷つけないように、いろいろ言葉を考えてるのが分かるところ、かな」

D「はいはい、ご馳走様。まぁ、その『人』の部分を好きになったんだから、何も言わないわよ」

C「人間中身だからねっ!」

D「あ、ほら、愛しの先輩が来たわよ?」

C「ちょ、ちょっといってくるねっ」

D「はーい、いってらっしゃい」

B「ふわぁ、眠い……。月末は新作エロゲが多くていかんな。
また食費を切り詰めないと。具なしチャーハン、具なしカレー……、悲しくなってくるな」

C「お、おはようございます、先輩」

B「ん? おう、おはよう。今日も元気そうだな」

C「はい、元気だけが取り柄ですから」

B「ははは、そんなことないだろ。ん? 髪型少し変えたか?」

C「は、はい。前髪をちょっと変えてみたんですけど、よく気付きましたね」

B「そりゃ気づくよ。昨日より可愛くなったんじゃないか。俺はこっちのほうが好きだな」

C「そ、そうですか、ありがとうございますっ!」

B「あ、あぁ、どういたしまし、て……?」

C「それでですね、あの、今週の日曜日って、先輩、空いていませんか?」

B「あぁ、悪い。新作がいろいろ出て、休みにまとめてやろうと思ってるんだ。ごめんな」

C「……え、エロゲですか?」

B「そう! 前からすごい楽しみにしててな。あそこの作品はほんと泣けるんだよ……。
今回もおそらく、いや、必ず泣けるなっ!!」

C「そ、そうなんですか……」

B「あー、そういえば、前に薦めてもらった映画見たよ」

C「ど、どうでした?」

B「いやぁ、いつも見ないようなジャンルだったから知らなかったけど、いい映画だった。
思わず泣きそうになったくらいだよ」

C「楽しんでくれたみたいでよかったです」

B「また今度、おすすめの映画があったら教えてくれない?」

C「はいっ! あの、それでしたら、今ちょうど、おもしろそうな映画がやっているんですけど……」

B「お、そうなんだ。それじゃあ、日曜日の埋め合わせに、来週の土曜日にでも見に行くか」

C「は、はいっ!! それじゃ後でメールしますね」

B「おう。あぁ、それと前に読みたがっていた漫画も見つけたから、今度持ってくるな」

C「はい!」

B「それじゃ、またな」

D「……いい感じだったんじゃない?」

C「そ、そうだよね! そう思うよねっ!」

D「にしても、趣味がエロゲーねぇ……」

C「いいのっ! 男の人がエッチなのは普通でしょ。
ただ、私、そういうのちょっと苦手だから、ガツガツしていない先輩といるとすごく落ち着くんだよね。
今まで付き合ってきた人って、みんなすぐにエッチなことしようとしてきて別れちゃったし……」

D「まぁ、さっきの気持ち悪い声だしてた『アレ』とかどうみてもあなたの体目当てだったものね……」

C「でしょ? 先輩の趣味がエロゲーでも、私は先輩が好きなのです」

D「きっと先輩もそのうちあなたの『中身』を好きになってくれるわよ。
あなたに惚れてる私が言うんだから、間違いないわ」

C「えへへ、ありがと」

B「よ、おはよう。昨日は悪かったな。ちょっと言い過ぎた」

A「『あぁ、おはよう。気にするなよ、俺のために言ってくれたことだろ?』」

B「うお、キモっ!! 止めろ、それ」

A「『ひどいことを言うなぁ』」

B「そんな作り物で恋人を作ろうなんて、馬鹿のすることだぞ」

A「『少しずつ作り物じゃなくしていけばいいんだよ』」

B「……はぁ、そんなんじゃ恋人ができる日はまだまだ遠そうだな」

A「『お前もな』」

B「……、どうだろうな?」

 

おわり

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