登場人物紹介
スティング
40代。キティを拾った元殺し屋。ジュエルと呼ばれるサファイアのような青い瞳を持つ
キティ
10代半ば。スティングに助けられた少女。
エメラルドのような緑の瞳を持つ。
ゼペット
年齢未設定。ドールハウスの支店長だが、オーナーの顔を見たことはない。
キティに襲い掛かる男とドールハウスの受付と被り。
ピノキオ
ビスクドールと呼ばれる高級男娼。白シャツ、ネクタイ、サスペンダー、半ズボン。
配役表
スティング(男):
キティ(女):
ゼペット、男、受付(男):
ピノキオ(不問):
☆スペシャルサンクス☆ 篠崎マーティ(レンガ)様、関野あず様
VanitasCity Ep.doll,hole,all. SIDE Doll House
スティング:安酒をあおり、適当に女を抱き、糞して寝る日々。
そんな生きた死人(リビングデッド)のような日々が今の俺の日常だ。
あれほど求めていた平穏というものは、俺にとってはただの【毒】でしかなかった。
5年前、この虚無の街、ヴァニタスシティを穴だらけにしていた日々がよみがえる。
暴力があった。イッちまいそうなほど強烈な快楽があった。
俺は酔いしれた。もっと、もっと味合わせてくれ、貪らせてくれ、と。
そして、地獄の釜の底まで落ちた時、そこには何もなかった。
あぁ、いや、違う。ひとつ最高なものがあった。
『あぁ、煙草、吸いてえなぁ……』
なにか、なにかないか?
俺をもう一度地獄へと連れ戻してくれる何か。
スティング:VanitasCity Ep.doll,hole,all.SIDE Doll House
(ヴァニタスシティ、エピソード、ドール、ホール、オール。サイドドールハウス)
キティ「や、やめっ……。くそっ、なんだよテメエっ!!」
男「っ、暴れんな、クソガキっ!!」
スティング:眠らない街とはいえ、路地裏には闇が巣食う。
いきつけのパブで酒をあおった帰り、路地裏から男の怒号と女の悲鳴が聞こえた。
男「いい加減抵抗すんのをやめたらどうだ? ぁあ!?」
キティ「きゃぁっ!!」(男に殴られる)
スティング:覗き込めば、男が乱暴に女を押さえつけていた。
殴られたのだろう。女の頬は赤くなっていた。
なんてことはない。この街じゃよくある光景だ。
レイプか人攫いかはわからねえが、俺には関係のないことだ。
キティ「離せっ、離せよ、畜生!! ……っ!?」
スティング:見ちまった。
闇の中、一際輝くエメラルドのような緑の瞳を。
女の救いを求める切なげな視線が俺に絡みついた瞬間、気づけば俺は男を壁にたたきつけ、靴底を舐めさせていた。
スティング「あぁ、くそ……。やっちまった」
キティ「……えっと、ありがと、おっさん」
スティング「あー、こいつ、知り合いか?」
キティ「全然知らない。急に襲い掛かってきてさ、抵抗したら殴られた。
……思い出したら、むかついてきた。クソッ!」
スティング:助けた女はよく見れば、まだまだガキだった。趣味が悪いこった。
ガキは気を失っている男に強烈な一撃をみまうと、気が済んだのか振り返り俺を見あげた。エメラルドのように輝く緑の瞳で。
キティ「おっさん、強いんだな」
スティング:「まあな。にしても、心当たりがねえとなると面倒だな……。
やっといてなんだが、こいつ、どこのもんだ?」
キティ「アタシが知るわけないじゃん。なんか持ってんじゃない?」
スティング「ちっ、男の体を漁る趣味はねえんだがな。
どれ……、あー、銃に、煙草、おっと、財布があった。
結構入ってんな。あん? このカード……」
キティ「なんかわかった?」
スティング「いや、俺にはわからねえが、こういうのに詳しい奴がいる。
ほれ、こいつはお前の取り分だ」
キティ「え? うわ、こんなにいいの?」
スティング「あぶく銭だ、気にすんな。さて、あいつんとこに行くのも何年ぶりだ……?」
キティ「えーと、とりあえず、助けてくれてありがとね。んじゃ、アタシはこれで」
スティング「帰すわけねえだろ。一緒に来い」
キティ「え!? あー、やっぱり、体で払う感じ?」
スティング「お前みてえなガキを抱く趣味は俺にゃねえよ。いいからついてこい」
キティ「ちょっ!? 離せって! くそっ、このっ!」
スティング「おーおー、これっぽっちも痛くねえな。猫がじゃれついてるようなもんだ。おら、行くぞ」
キティ「はな、放せってば! おっさんも人攫いじゃねえか!?」
スティング:暴れる子猫を連れて、路地裏のさらに奥、【ネット】へと足を踏み入れる。
この街の闇に住まう者たちの通り道。
相変わらず、鼻がひん曲がりそうなひでえ臭いがしてやがる。
ただ、帰ってきたとも思ってしまう俺がいる。
ひとまず、スネイクからこのカードの情報を聞き出さねえとな。
こいつが俺をもう一度地獄へと引きずり込んでくれる切符になるのかどうか。
キティ:アタシがスティングに救われて三日。
あの夜から、アタシはスティングの隠れ家に匿ってもらっている。
代わりと言っちゃなんだけど、苦手なりに家政婦よろしく家事をこなしている。
スティング『あー……、こんなにこの部屋は広かったか?』
キティ『スティングが散らかしすぎなんだってば。酒の空瓶ためすぎ』
スティング『ありがとうよ、キティ』
キティ『ごめん、料理失敗した』
スティング『気にするな。腹に入れば美味いも不味いもない』
キティ『……絶対、おいしいって言わせてやる』
スティング『期待せずに待っててやるよ』
キティ『アタシがベッドで寝ていいの?』
スティング『なんだ、一人じゃ寝れないのか?』
キティ『ばっ、そんなんじゃねえよ!!』
スティング『ガキが変な気を回してんじゃねえよ』
キティ:スティングは優しかった。
スネイクにスティングは殺し屋だって教えてもらったけど、まるでそんな風には見えない。
彼の蒼い瞳がやさしく細められ、乱暴に頭を撫でられるのも悪くないと思った。
だけど、日に日に、スティングが纏う空気が息が詰まりそうなほど濃密になっていくのを肌で感じていた。
人殺しの、殺し屋の空気。
スティング「841.842.843……」
キティ「スティング?」
スティング「フゥ、どうした?」
キティ「さっきスネイクがやってきて、これ渡しといてって」
スティング「あぁ、そこにおいといてくれ」
キティ「なんか今日のスネイク、気持ち悪いくらいご機嫌だったんだけど」
スティング「今日であれから三日目だ。【卵】でも食ったんじゃねえのか?」
キティ「……あー、そういうこと……。おえぇ……。
ねえ、それ、何が入ってるの?」
スティング「気になるか」
キティ「ちょっとね」
スティング「そんな特別なもんじゃねえぞ?」
キティ:スティングが乱暴に梱包を破り捨てると、小さな木箱がでてきた。
それを開けると、中には大小さまざまな真っ黒な釘がぎっちりと入っていた。
スティング「こいつが俺の商売道具の一部だ」
キティ「これって、釘……だよね?」
スティング「あぁ、ロウト・ヘッド・ネイルズ。5/8インチに1インチ、2インチ、5インチのもあるぞ?」
キティ「それ、どうするの……?」
スティング「【俺の名前を言ってみろ】」
キティ「……【スティング】」
スティング「どうするか分かったか?」
キティ「う、うん……。銃とかじゃないんだね」
スティング「特注のネイルガンがあってな、貫通させるのは勿論、縫い付けて動きを止めることも出来る。
なにより、銃をちらつかせるよりも、身近なもんな方が人間、恐怖を感じるもんだ。
自分の身になにが起きるか、よぉく理解できる」
キティ「確かに想像したくない、かな……」
スティング「それに【ヘッジホッグ】にできねえしな……」(小声)
キティ「何か言った?」
スティング「いいや?」
キティ「そう。これで5年前まで、人を殺していたんだ……」
スティング「あぁ、この街を穴だらけにしまくっていた」
キティ「でも、やめてたんだよね? なのに、アタシのために」
スティング「何を寝ぼけたこと言ってやがる。いつ、お前のためだなんて言った」(ちょっと前のセリフを食う感じに)
キティ「だって、殺し屋をやめて今まで平穏な日常を送っていたんじゃ」
スティング「この5年、腐った卵をダースで飲み込んだような日々だった。四六時中ずっと吐きそうだった。
どうやら俺にとっちゃあ、平穏なんてもんは毒だったのさ。
我ながらよくぞ5年も耐えたもんだ」
キティ「え……」
スティング「これはお前のためなんかじゃねえ。俺のためだ。
俺はずっと待ち望んでいたんだ。もう一度、あの地獄の釜の底で踊り狂うのを」
キティ「スティング……?」
スティング「フゥ、フゥ……、あぁ、早くぶち殺して、ぶち殺されてぇ……」
キティ:スティングの瞳の奥に、鋭く燃える青い焔(ほむら)が見える。
今にも火がついてしまいそうな火薬庫のような剣呑さ(けんのんさ)。
そして、気づかされる。
サファイアのように強く輝く瞳に、アタシはあの日、その瞳にのぞき込まれた瞬間から魅せられてしまっていたんだ。
この人に、この青い焔に包まれてしまいたいと。
気付けば、アタシはスティングの手に小さな釘を握らせ、自分の耳に当てさせていた。
スティング「っ、キティ?」
キティ「っハァ……。アタシに穴をあけて、スティング。お願い……」(恍惚と)
スティング「自分が何を言っているのか分かっているのか?」
キティ「うん。分かってる、全部分かってるよ。だから、お願い。アタシをスティングのものにして、愛してるなんて言わなくていいから」
スティング「……いてえぞ?」
キティ「痛くして……」
スティング「……」
キティ「づっ!! 続けて!」
スティング「っ」
キティ「ァアッ!!」
スティング「フゥ、フゥ……」
キティ:ブツンと肉を貫通した音がやけに大きく聞こえた。
燃えるような痛みが次第に強くなり、涙がこぼれそうになる。
スティングの股間が痛いほどに張りつめているのが見えた。
キティ「これでヴァージンじゃなくなった、かな?」
スティング「キティっ!」
キティ:スティングに強く抱きしめられ、これから犯されるのだと思ったが、彼の動きはそこで止まった。
スティング「フゥー、フゥー……」
キティ:強く歯を食いしばり、獣のような荒い息遣いが彼の口から洩れる。
この蒼い瞳をもつ獣にこの身を貪られたいと体の芯が疼く。
スティング「……明日だ。明日、ゼペットをぶっ殺したら、朝まで、いや、お前の声がかすれて出なくなるまで抱いてやる。……いいな」
キティ「うん、いいよ。今度は大きな穴をあけて、スティング……」
スティング「すりきれるまでやってやるよ。泣いてもとめてやんねえからな」
キティ「へへ、望むところだ。ロリコン」
スティング「ふん、馬鹿な女だ」
キティ「……んっ、んぅ……」
スティング「っ……んん、っはぁ……」
キティ「っあはぁ…。キスは優しいんだ」
スティング「生意気な口はふさがねえといけねえな」
キティ「クス、舌、噛んでやる」
スティング「やってみろよ。んっ……」
キティ:きっと明日はこんな優しいキスする余裕なんてないくらい、滅茶苦茶にされるんだろう。
泣いて謝っても、絶対に許してくれなくて。
お互い獣のように貪りあって、汗まみれになって、泥のように混ざり合うんだ。
子宮がこの男を、獣を求めている。なにもかもを呑み込んでしまいたいと。
スティング「ここだな……」
スティング:高級娼館、ドールハウス。
御伽噺から飛び出してきたようなファンシーなナリのくせに、むせ返るほど甘ったるい香水の香りが店の外にまで匂ってきやがる。なるほど、こいつは魔窟だ。男と女が喰らい合う場所だ。
やけにデカい扉をくぐれば、そこは吹き抜けのホールになっていた。
天井からはちょうど人間が入るサイズの巨大な鳥かごがいくつも吊り下げられていた。
受付「おやおやぁ? お客様ですかなぁ?」(道化のように)
スティング:古臭い貴族のようなゴテゴテした装束の男が近づいてきた。
俺は懐からスネイクから預かってきた瓶詰めの目玉を見せる。
途端に道化のような表情がナイフのように鋭く切り替わる。
受付「……店主から話は聞いております。少々お待ちを」(低いトーンに切り替わる)
スティング:男が店の奥へと下がっていく。
あたりを見回せば、内装まで御伽噺に侵食されている。
そして、値踏みするような女の視線がそこらここらから俺に注がれているのがよく分かる。
薄く笑い、サングラスをずらし、その視線に返してやる。
途端に腐り落ちる寸前の果実のような濃厚な女の香りがさらに濃くなる。
スティング「フン……」
ピノキオ「お客様、あまり女どもを魅了なさらないでください」
スティング「ぁん? お前は?」
ピノキオ「申し遅れました。私はピノキオと申します」
スティング「ゼペットにピノキオ、ね」
ピノキオ「主人がお待ちです。こちらへどうぞ」
スティング:ピノキオと名乗った年端も行かないガキが俺を店の奥へといざなう。
どこか幻想的な空気をまとう、人間離れした美しさを持つ少年。
なるほど、こいつがビスクドールってやつか。
だが、こいつは……。
スティング「おい、ピノキオっつったか?」
ピノキオ「はい、お客様」
スティング「お前、【歳はいくつだ?】」
ピノキオ「……。【見た通り】、ですよ」
スティング「ガキがそんな匂いさせるかよ」
ピノキオ「匂いますか?」
スティング「あぁ、匂うな。腐肉を貪る狗の匂いだ……」
ピノキオ「……。私はただのドールです、お客様」
スティング「なるほど、ドールね。全身作りこまれてやがるな。【いつからそんなナリしてんだ?】」
ピノキオ「【ドールとは、永久(とわ)に変わらぬものです】。お客様」
スティング「……お前ェ」
ピノキオ「こちらの部屋で主人がお待ちです」
スティング:気付けば一際豪勢な扉の前まで来ていた。
敏感に空気の変化を嗅ぎとり、出鼻をくじく老獪さ(ろうかいさ)。
こいつは厄介な野郎だ。
ピノキオ「お客様をお連れしました」
ゼペット「入ってもらってくれ」
ピノキオ「失礼いたします」
スティング:部屋の中は豪奢(ごうしゃ)な調度品がセンス良く置かれていた。
目の前のクズのセンスとは思えない。ピノキオのセンスだろう。
ゼペット「俺がゼペットだ。スネイクから話を聞いている。早速で悪いが見せてもらえるか?」
スティング「……こいつだ」
――スティングが取り出した目玉の入った瓶を手に取るゼペット
ゼペット「おぉ、こいつはすげぇ……。これがジュエルか……」
ピノキオ「……ハァ」(小さなため息)
スティング:中に入っているのが偽物だとも気付かずに目を輝かせているゼペットに対して、後ろから小さなため息が聞こえた。
まるで、出来の悪い子供を前に父親がつくような諦念(ていねん)の籠(こも)った重いため息。
スティング「へっ……。なぁ、ピノキオ」(小声)
ピノキオ「なんでしょう? お客様」(小声)
スティング:俺はドールハウスのカードをちらりとピノキオに見せつけ尋ねる。
おそらく、俺の【予想】は間違っちゃいねえ。
スティング「doll? hole? all?」
ピノキオ「……hole」
スティング「Yes, sir.」(低くゆっくりと)
スティング:ほらな、思った通りだ。
俺は低く答えると相棒を懐から引き抜き、一息に間抜け面をさらしているゼペットを打ち抜いた。
ゼペット「っ、あづっ!!!」
スティング:手の甲を貫かれたゼペットが瓶を落とし、自分の身に何が起こったのかを凝視する。
ピノキオは止めない。止めるわけがない。
ゼペット「なっ!? く、釘!?」
スティング「Bow wow!!」
ゼペット「はっ……?」
スティング:ゼペットに飛び掛かり、そのまま思い切り壁に叩きつける。
即座に右手に3本、左手に3本、釘を打ち込んで縫い付ける。
ゼペット:「つぁああああっっ!! がぼっ!?」
スティング:大口をあけたゼペットの口に5/8インチの釘をめいっぱい放り込み、そのまま手でふさぐ。
そして、太ももに相棒を押し付け何発も釘を打ち込む。
豚のような汚ねえ悲鳴が部屋に木霊する。
ゼペット「んぶぅぅぅっ!!!!」(連続で5発)
スティング「ぁんだよ? 入れられるのは慣れてねえのか? 気持ちいいだろ? なぁ!」
ゼペット「んぐぶぅぅっ!!! ぶんんんぅぅぅぅ!!!!」(悲鳴に合わせて1発ずつ)
スティング「悪いが、俺は豚の言葉はわかんねえんだ。もっと欲しいって言ってんのか?」
ゼペット「ん~~!!! ん~~っ!!」(首を横に振る)
スティング「そんな焦れんなよ。おら、これがいいのか? なぁ?」
ゼペット「んぐぶっ!!」(1発)
スティング「どうなんだ?」
ゼペット「んぼぉっ!!」(1発)
スティング「気持ちよすぎてイッちまいそうだってか?」
ゼペット「んぐぅぅぅぅ!!!!」(1発)
スティング:ゼペットの口から血まみれのくぐもった悲鳴と釘のこすれる音が漏れる。
まだまだ釘は腐るほどある。この糞野郎が静かになるまで打ち込んでやる。
後ろを見やれば、ピノキオは表情も変えず、何も言わず、じっと俺の行為を見ていた。
ピノキオ「お客様、もうその辺でよろしいのでは?」
スティング「おっと、つい夢中になってやりすぎちまった」
ピノキオ「死んではいないようですし、【十分優しい】かと」
スティング「へへ、これが優しい?」
スティング:ゼペットの両足は【釘バットなんて目じゃねえほど】釘まみれになっていた。
白目をむき、口からは真っ赤な泡と釘をこぼすゼペットに唾を吐きかけ、ピノキオに向き直る。
ピノキオ「えぇ、死にさえしなければ、いかようにもなれる。私のようにも」
スティング「お前、俺のこと知ってんだろ?」
ピノキオ「元何色にも染まらない者(元クリアカラー)、針鼠(ヘッジホッグ)、錆びた釘(ラスティネイル)、刺す者(スティング)」
スティング「ラスティネイルってのは聞いたことがねえな」
ピノキオ「ふふふ」
スティング「あんたがドールハウスのオーナーだろ?」
ピノキオ「えぇ、パペッターと申します」
スティング「人形繰り(パペッター)ね。それでどうする? やるか?」
ピノキオ「いえ、お客様にはゴミの始末をしていただいただけです。やり合う必要はないかと」
スティング「そうかい。流石の俺も【ターミネーター】とはやりあったことがねえからな、ちょいと楽しみだったんだが」
ピノキオ「やはり、お気付きに?」
スティング「どんなカラクリになってんのかは、わかんねえけどな。なあ、試しにどんなことができんのか見せてくれよ」
ピノキオ「手品のネタは知らない方が楽しめると思いますが?」
スティング「へへ。んじゃ、その時まで楽しみにしておくか」
ピノキオ「お客様、ニーナ・アーヴィングはどうなさいますか?」
スティング「ッ、てめぇ……」
――ピノキオが投げたカードを受け止めるスティング
スティング「っ!? カード?」
ピノキオ「doll? hole? all?」
スティング:なんて気障な野郎だ。コイツは俺が何て言うか分かっていて聞いてきやがる。
あの小生意気なガキ、エメラルドのように輝く緑の瞳、俺を魅了しやがった女。
アイツは、キティの全ては、【俺のモノ】だ。
スティング「all」
ピノキオ「お買い上げありがとうございます。【生かす】も【殺す】もあなたの思うがままに。存分にお楽しみください」
スティング「あぁ、存分に楽しませてもらうさ」
スティング:頭を下げるピノキオに背を向けて、俺は部屋を後にする。
御伽噺の館での人形劇(パペットショウ)はこれで終わりだ。
子猫が俺の帰りを待っている。
穴を開けてほしいと俺を待ち望んでいる。
スティング:ヴァニタスシティ、この街にはなにもありゃしねえ。
血と暴力に塗れて、そんな中で煙草を吸うことしか楽しみがなかった。
あぁ、それなのに……。
今は煙草なんかよりも、アイツが欲しい。
滾る熱をすべてあいつにぶち込んでやりたい。
こんな地獄の釜の底にまで付き合ってくれる、最高の女に。
つづく