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たいようのはな。九章:彼女のねがい。

登場人物

桐崎 晃汰(きりさき こうた)
 東京の大学へ通う大学生。
 写真が趣味であり、そのレベルはプロになるには一味足りないといった具合。
 現在、スランプ。
 いつからか原因不明の頭痛に悩まされるようになるが、すぐに治まるため深刻には考えていない。
 紗奈のことを大切に思っており、何かあればすぐに大丈夫かと訊ねるほど。

「今回の旅行で紗奈の写真もたくさん撮るつもりだから、頑張って慣れようね」

 

沢渡 紗奈(さわたり さな)
 晃汰の恋人で、同じ大学へ通っている。
 白という色を好み、晃汰の撮る写真に惹かれ、付き合うことに。
 とても恥ずかしがり屋な性格で人見知り。
 初めての人と出会うと晃汰の背中に隠れるほど。
 丁寧な言葉づかいとふんわりとした性格から、小動物のような雰囲気を持つ。

「そ、そういう恥ずかしいこと言うの、禁止、です」

​ 

双海 夏希(ふたみ なつき)
 晃汰の幼馴染。晃汰のいない間も彼の祖父母に何度もお世話になっている。
 演劇サークルに所属しており、主役を張るほどの演技力を持つ。
 さっぱりとした性格と腰まであるポニーテール、豊満な体つきが特徴。

「よろしくね、紗奈ちゃん。
アタシのことは夏希さんでも夏希ちゃんでも好きなように呼んでいいから」

桐崎 清次(きりさき せいじ)
 晃汰の祖父。ぶっきらぼうな喋り方をするが、性格は優しく、晃汰のことを大切に思っている。
 愛煙家であり、お気に入りの銘柄はピース。
 事故で息子夫婦(晃汰の両親)を亡くしている。

「おう、晃汰か。またでかくなったな」

桐崎 しの(きりさき しの)
 晃汰の祖母。常に人を安心させる笑みを浮かべ、その笑みに負けず劣らず優しい性格をしている。
 プロ顔負けな料理の腕をもつ。

「ふふふ、晃汰の祖母の桐崎しのです。お婆ちゃんでいいよ、紗奈ちゃん」


  事故の場に居合わせたサラリーマン。
  体格がよく、妻子持ち。男らしい。


  事故の場に居合わせたOL。
  理知的な雰囲気を持っている。クールビューティー系。

※被りと表記してある人物は、誰かが兼ね役でお願いします。

配役(2:3:1)かぶり(2:2:0)
晃汰:
紗奈:
夏希:
男:
女:
ナレ:

被り
清次:
しの:
野次馬男:
野次馬女:

九章:彼女のねがい。

晃汰:――雪が降っている。紗奈の好きな白い雪が。(三章と同じセリフ)

 

紗奈:たいようのはな。九章:彼女の願い

 

SE:ジングルベル(次第に音がゆがんでいく)
SE:ガヤ(ノイズ入り)

ナレ:壊れたラジオから聞こえてくるような声と耳鳴りに、晃汰はゆっくりと重たい瞼を開けた。
横たわったまま眺める夜空は、ビルに挟まれて窮屈そうに見えた。

晃汰「っはぁ……、雪……?」

ナレ:痛みに漏れた吐息は白くにごり、すぐさま消えていく。

晃汰(なにが、おきた……? 思い出せ……)

紗奈『晃汰くん、見てください、ホワイトクリスマスですよ』

晃汰(そうだ、今日はクリスマスで、紗奈とデートをしていた。
この日のために、指輪を用意して、それから……)

SE:キキィィー!!!

紗奈『え?』

晃汰(白い光が急に迫ってきて、紗奈がその光に吸い込まれるように……)

SE:ドンッ!!(車にはねられる音

晃汰「っ!? 紗奈、っっあ」(痛み)

男「おっと、動かないほうがいい」(ノイズ)

晃汰(誰、だ……?)

男「じきに救急車がやってくる。それまで動いちゃだめだ」(ノイズ)

晃汰(耳鳴りが……。何を、言って……)

ナレ:晃汰の隣にはスーツ姿の男が寄り添っていた。

晃汰「さ、なは……?」(かすれ声)

男「君の恋人ならあそこにいる。
大丈夫、彼女にも他の人がついてるから」(ノイズ)

SE:ギシ(首を動かす)

ナレ:痛む体に鞭打って首を動かせば、そこに紗奈が横たわっているのが見えた。
彼女の隣には見知らぬ女性がしゃがみこんでいた。

晃汰「さ、な……」

SE:ズリ(紗奈に近寄ろうとする)

男「お、おい!? 動いたらだめだっ!」(ノイズ)

晃汰「っ!!」

SE:パン(男が止めようとした手を払う)

晃汰「邪魔を、す、るな……」

男「……、俺にも女房がいる。君の気持ちは痛いほど分かるよ」(ノイズ)

SE:ガシ(晃汰を抱き起こす

晃汰「あっ!? ぐぅぅ……」

男「そばにいたいんだろう?
なら、我慢しろよ、惚れた女のためだ」(ノイズ)

SE:ズルズル

女「な、なにをしているんですか!?」(ノイズ)

男「惚れた女のそばにいたいんだとさ」(ノイズ)

女「だからって……」(ノイズ)

SE:ズサ(男が晃汰から離れる)

ナレ:男は紗奈のそばまで晃汰を連れてくると、そっと離れた。
晃汰は片手で体を支えながら、彼女の顔を覗き込む。
その顔に傷はなく、雪のように白い。

晃汰「さ、な……」

紗奈「はぁ……、はぁ……」(短く吸い、ゆっくり吐く。風邪の時みたいな呼吸)

SE:ギュ(紗奈の手を握る)

晃汰「紗奈……」(紗奈に心配かけさせないよう、痛みをこらえて普通を装う)

紗奈「はぁ……、っ、は、この、手は……」

晃汰「うん、僕だよ」

紗奈「こう、たくん……」

女「目を、覚ました……」(ノイズ)

男「邪魔しないでやろう。ただ、様子がおかしくなったら、動くからな」(ノイズ)

女「わかりました」(ノイズ)

SE:足音(男と女去る)

晃汰「すぐに、救急車がくるからね」

紗奈「はい……、わかり、ました……」

晃汰「無理に喋らなくていいよ」

紗奈「晃汰くん、こそ……」

晃汰「僕は大丈夫」(痛みをこらえて微笑みかける

紗奈「はぁ……。晃汰君の、手……、大きい、です……」

晃汰「紗奈の手が小さいだけだと思うよ?」

紗奈「……あたたかい、です」

(BGMのゆがみなど除去)

女「救急車はまだでしょうか……」

男「クリスマスだからな。
彼氏のほうは死ぬような怪我はしていないと思うが、彼女さんのほうはどうなんだ?」

女「外傷はそれほどひどくないように思うんですが、呼吸が、弱くて……、もしかしたら……」

男「……なんにしろ、救急車が早く来るのを祈るばかりだ。
そういや、事故を起こした張本人は?」

女「あちらのほうで震えてますよ」

男「ん、……くそ、まだガキじゃないか」

女「ほかに私達ができることはないんでしょうか。このままじゃ、あの子」

男「だからといって、俺達が出る幕じゃないだろう」

女「ですが」

男「あんた、もしも自分の最後の時、誰といたい?」

女「……」

男「他人の出る幕じゃねえよ」

女「……見ていることしかできないんですか」

男「なに、少しは手伝えることがあるさ。
おら、見世物じゃねえんだっ!! 散れ散れっ!! 通行の邪魔になるだろっ!!」

女「っ。(男の行動に手伝えることを悟る)
すいません、救急車が来た時の為に、皆さんこの場から離れてください!
皆さん、ご協力くださいっ!!」

野次馬女「うわぁ、あれ見てよ、ドラマみたいじゃない?」

野次馬男「マジヤベエ」

SE:パシャ

男「っ!? 写真なんかとってんじゃねえ!! ぶっとばすぞっ!!」

女「すいません、お医者様はこの中にいらっしゃいませんでしょうか!?」

(BGMは通常のまま)

ナレ:遠くから聞こえる声は、晃汰にとってノイズにしか聞こえない。
紗奈の途切れそうなか細い声を聞き逃すまいと、晃汰は彼女へと顔を寄せる。

紗奈「晃汰、くん……。デート、ごめん、なさい……」

晃汰「紗奈が謝ることじゃないでしょ?」

紗奈「ですが……」

晃汰「……こんなタイミングになるなんて、思いもしなかったけど……」

SE:ゴソゴソ(リングケースをポケットから取り出す)
SE:パカリ

晃汰「これを、受け取ってくれるかな?」

ナレ:晃汰が取り出した黒いリングケースの中には、銀のペアリングが入っていた。
紗奈の薄い瞳が一瞬見開かれ、すぐに悲しみによって細められた。

紗奈「……っ、はぁ……」

晃汰「……紗奈?」

SE:パタン

ナレ:彼女の血に濡れた指先がそっとリングを撫で、ケースは優しく閉じられた。

紗奈「これは……、受け、取れません……」

晃汰「どうして……」

紗奈「……はぁ、っは、……私、晃汰くんに出会えて、本当によかったです……」(話をそらす)

晃汰「っ、急に何を言い出すのさ」

紗奈「……晃汰くん……」(じっと晃汰を見つめる)

晃汰「……っ、僕も紗奈に出会えてよかったよ、だからっ!」

紗奈「はぁ、嬉しいです……。もう、何も怖いものなんてありません……」(幸せそうなため息)

晃汰「っ」

ナレ:ならば、今まで何が怖かったのか。
その一言が晃汰の思考を止めた。

晃汰「さな……?」

ナレ:紗奈の震える指先が愛おしむように彼の頬に触れる。
その指先は、雪のように冷たかった。

紗奈「あいして、ます……、こう、た、くん……」

SE:トスン(腕が落ちる音)

晃汰「紗奈……? ねえ……。
嘘、でしょう……。紗奈、紗奈ぁ……。
あ、あぁ、ぁ、あああぁぁぁぁぁぁ……」(泣き)

SE:ギュゥゥゥ

ナレ:痛みも忘れ、晃汰は紗奈を強く抱きしめた。
いつもなら恥ずかしさに強張るはずの彼女の体は、腕の中、身じろぎもしなかった。

晃汰(信じない……、紗奈のいない世界なんて、信じるものか……。
こんなの、夢に決まってるじゃないか……。全部、全部夢だ……、夢なんだ……)

(バックに晃汰の泣き叫ぶ声いれていいかも?)

​SE:サァァァァァ(薄いノイズフェードイン。下のナレ中も流れ続ける)

ナレ:雪が、降っている。
彼女の好きな白い雪が。
晃汰の視界は雪によって優しく包み隠され、何色にも染まらぬ純白へと変わる。
彼女の色が、彼の世界を包み込む。
何も見えないように――。
何も、見ないように――。

SE:サァァァ(前のノイズがナレ後、次第に強くなっていった後、急に止まる)

夏希『コウちゃん……』(ノイズ。エコー)

晃汰(誰、だ……。僕の名前を呼ぶのは……)

しの『晃汰……』(ノイズ。エコー)

晃汰(懐かしい、声が聞こえる……)

清次『晃汰……』(ノイズ。エコー)

晃汰(とても、優しい……、でも、少し悲しそうな声……)

ナレ:純白の世界に、いくつもの声が木霊する。
全てを拒絶する晃汰の前に、彼が唯一望む彼女の姿がおぼろげに浮かび上がる。

紗奈『晃汰、くん……』(ここで現れる紗奈は、晃汰の作り上げた幻ではなく、本物の紗奈。悲しそうに)

晃汰(紗奈……?
なんでだろう、ずっとそばにいたよね?
なんでこんなにも、泣きそうになるんだろう……)

紗奈『……』(悲しそうに)

晃汰(どうしたの? どこか、痛いの……?)

紗奈『胸が、痛いんです……』

晃汰(どうして?)

紗奈『……』(これから自分のすること、晃汰が自分を思っていることなどが混ざり、胸が痛む)

晃汰(なにか僕に出来ることはある?)

紗奈『……、やっぱり、晃汰くんは晃汰くんですね。(それを振り切り、優しい笑みを浮かべる)
私が好きになった、大切な人です』

晃汰(紗奈……?)

紗奈『だから、あなたには幸せになってほしい』

晃汰(っ、それ……)

ナレ:紗奈はどこからともなく、黒いリングケースを取り出した。
それは彼の云う夢の中で、彼女が拒んだものだった。

紗奈『晃汰くん、開けてもいいですか?』

晃汰(もちろん、紗奈のためのプレゼントなんだから)

ナレ:心の奥から『やめろ』と叫ぶ声が聞こえた。
晃汰はそれを強引に抑え込んだ。彼女に喜んでもらうために。

紗奈『ありがとう、ございます……』(悲しそうに)

SE:パカリ。なにかBGM流れてたら変化?

晃汰(え? なんで……?)

ナレ:リングケースの中は、赤黒く汚れていた。
彼女の血に濡れた指先がよみがえる。

晃汰(あれは……、夢、でしょ……?)

紗奈『いいえ、夢ではありません……』

晃汰「嘘だ……、嘘だ嘘だ嘘だっ!!事故なんてなかったっ!!
一緒にクリスマスツリーを見たじゃないか。あんなに綺麗だったじゃないか!」

紗奈『それは、晃汰くんが望んだ夢ですよ』

晃汰(夢……? それじゃあ、あの事故は……)

紗奈『本当にあったことです』

晃汰(っ!?)

紗奈『あなたは私の死を受け入れられず、夢を現実だと思い込んでいるんです』

晃汰(そんなの……、嘘だ……)

紗奈『そのために、あなたは自分を傷つけ、もう一人の私を作り上げた』

晃汰(もう一人の、紗奈……?)

紗奈『あの公園で別れを告げた私ですよ。
忘れてしまったんですか?』

晃汰(っ!?)

紗奈『――――さようなら』(七章より)

ナレ:その瞬間、彼女とすごした夏の日々とともに、悲しみに濡れた言葉がよみがえる。
冷たい指先と胸が張り裂けそうな痛みも。

晃汰(あれは……)

紗奈『夢なんかじゃありませんよ。現実でも、ないのかもしれませんが』

晃汰(……どういう)

紗奈『彼女は、晃汰くんが私との思い出から作り上げた幻です。
本当なら、彼女はあなたに触れることはできません』

晃汰(じゃあ、やっぱり、夢じゃ……?)

紗奈『いいえ、彼女はあなたに触れました。夢を終わらせるために。
それはきっと、自分が消えると分かっていても、それを望んだ彼女が起こした奇跡なのではないでしょうか』

晃汰(なら、あの紗奈は……)

紗奈『消えました。というよりも、再び晃汰くんの中の思い出に戻りました』

晃汰(あ……)

紗奈『あなたが気づかなくても、沢渡紗奈も『私も』、ずっと晃汰くんのそばにいますよ』(七章より)

晃汰(そういう意味で……。っ!? それじゃあ、紗奈も?)

紗奈『はい、ずっとあなたのそばで見ていました。
だから、現実から目をそむけ続ける晃汰くんを見ていて、悲しかったです』

晃汰(っ、もしかして、花見の時に僕が見た桜の精は……)

紗奈『私です。
あの時、私が悲しそうな目で晃汰くんを見ていたって、あの子に言いましたよね?
きっとその時、あの子はそれが私だと気づいたんだと思います。
それともうひとつ、このままじゃ、だめなんだってことも……』

晃汰(僕、は……)

紗奈『晃汰くん……』

ナレ:ふと気づけば、紗奈は晃汰のすぐそばに立っていた。
あの時と同じように、彼女の細い指が彼の頬に触れようとゆっくりと近づく。
晃汰は雪のような冷たさを予感し、きゅっと目をつむった。

晃汰「……っ、あぁ」(冷たいと思ったが、温かくて息が漏れる。泣きそうになるほど

ナレ:その手は、太陽のようにあたたかかった。

紗奈『もう、夢は終わりの時間です』(とても優しく)
夏希『もう、夢は終わりの時間だよ』(とても優しく)

ナレ:紗奈と夏希の姿が重なる。
胸が切なくなるようなその温もりを感じて、
もうすぐ夢から覚めるのだと晃汰は察した。

晃汰(ずっと、このままならいいのに……)

紗奈『ふふ、いけません。私はちゃんと晃汰くんのそばにいますから。
それに、あなたが夢から覚めるのを、待っている人達がいます』

夏希『コウちゃん』(エコーのみ)

しの『晃汰』(エコーのみ)

清次『晃汰』(エコーのみ)

晃汰(夏希……、婆ちゃん……、爺ちゃん……)

紗奈『私の愛した人は、太陽のように皆さんに愛される人ですから』

ナレ:あの公園の時と同じように、紗奈の姿が白い世界へとゆっくり溶けていく。

晃汰(紗奈っ!!)(紗奈へ手を伸ばしているイメージ)

紗奈『私はあなたと出会って、本当に幸せでした。これ以上ないというくらい。
晃汰くんもそう思ってくれていると、嬉しいです』

晃汰(僕も、僕も紗奈と出会えてよかったよ。
紗奈が隣にいるだけで、本当に幸せだった……)

紗奈『くす。晃汰くん、私の最後のお願いを、きいてくれますか?』

晃汰(……最後、なんだね?)

紗奈『はい、最後です』

晃汰(……、なにかな?)

紗奈『幸せになって下さい』(けっこう溜めてOK)

晃汰(っ。紗奈……)

紗奈『愛しています、晃汰くん』

ナレ:最後の言葉を残して、紗奈は白い世界へと溶けるように消えていった。
微笑みを浮かべたまま。

晃汰「うぅっ……っ、ひぐっ……」(下のナレと重なる感じ)

ナレ:晃汰は頬に触れているぬくもりに手を重ね、嗚咽をこぼす。
世界が白から黒へと染まっていく。
彼を捕らえていた長い、長い夢が、終わったのだ。

夏希「コウちゃん……」

ナレ:晃汰が瞼を開けると、彼を膝に抱いて泣いている夏希と目が合った。
自分の頬に触れているぬくもりが、彼女の手によるものだと晃汰は気づいた。

晃汰「なつ、き……」(泣き抑える)

夏希「っ。……おかえり、コウちゃん」(泣きながら笑顔を浮かべる。最初の「っ」は驚き)

晃汰「ただいま……」

夏希「紗奈ちゃんに、会えた……?」

晃汰「……会ったよ」

夏希「そっか。なんて言ってた……?」

晃汰「っ……、うっ、うぅ……、幸せに……っ、なってほしいって……」(また泣きはじめ)

夏希「……そっか」

ナレ:晃汰は頬に触れている夏希の手をそっと握った。

晃汰「紗奈の冷たい手が、僕の夢を終わらせてくれた。
夏希の温かい手が……、僕を連れ戻してくれた……。
……っ、あり、がとう……」

夏希「くす、なんでもないよ、こんなこと」

ナレ:晃汰は涙をぬぐうと、夜空を見上げた。
先ほどまでの全てを拒絶する白ではなく、全てを受け入れた黒い世界。
満天に広がるきらびやかな星々、薄く笑みを浮かべているような、目を細めているような青白い月。

晃汰「あぁ……、綺麗だ……」

ナレ:夢から覚めた彼の見る初めての景色は、美しい夏の夜空だった。

 

つづく

この記事を書いた人
書上トモ

仮面夫婦の夫。動画作成や別名義で声劇台本やセリフを書いている。
最近、煙草をやめるように妻に言われて、禁煙をしてはまた吸ってしまう日々を繰り返している。
別名義:モモチヨロズ。ツイキャスやボイコネ、スプーンに現れる。
声劇歴だけは異常に長い。

声劇台本
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仮面夫婦の仮面の中